序章

 

この作品は、残酷的な描写が多く含まれます。
また物語上、人によっては受け付けられない、読み流すことができないような好みが大きく分かれるような展開にもなるため、自己判断のもとお進みください。
また、恋愛要素もかなり薄いです。
物語を読んで気分を害されたとしても一切の苦情は受け付けません。
以上をご理解いただいた上で、先にお進みください。

 


 

 悠々と王座に腰かけていた魔族の王は、訪れた勇者を目して黒の瞳をすっと細めた。

「やはり、来たか」

 勇者はかけられた言葉に応えて表情をかたくする。その背後では仲間の魔術師が苦しげな顔で魔王を見上げていた。
 魔王は立ち上がる。緋色の長髪が肩から滑り落ちた。
 勇者は油断なく魔王を見つめたまま手にしていた剣を構える。それを眺めながら階段を下りて、魔族の王たる者は彼らと同じ高さに立った。その分距離が詰まるも、それぞれ近づいた気にはなれなかった。
 黒く染まった爪先を腰に向け、自らも闇色の剣を手に取る。それを勇者に向けて、静かに目を閉じた。

「勇ましき者よ。我らはどちらか一方しか存在が許されぬ。それなればこそ、戦う定めが覆ることはない」

 勇者が持つのは、太陽の輝きを宿したような黄金色の髪に、澄んだ空を想わせる青い瞳。何の汚れも浮かばぬ闇を跳ねる白い肌。
 対する魔王が持つは、すべてを燃やし尽くすような紅蓮に染まる髪に、何ものをも引きずり込む常闇の瞳。魔の者の象徴である褐色の肌。
 光の象徴とされし者と、闇の化身とされし者。相反する二人は、これから互いの存在を賭けた最期の戦いに身を投じる。
 生き残るのは片方のみ。はたして勝利はどちらが掴むのか。どちらが世界の真理となるのか。

「さあ、はじめようか。これが最後だ」

 魔王の言葉を皮切りに、世界の命運の分かれ目を定める死闘が幕明ける。

 

 ――これより始まるは、勇者と魔王の物語。

 

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