◇夏の午睡◇

菜月さまより、未来の岳里と真司とそして+αのとある夏の穏やかな昼寝風景を書いていただきました!

※Desire完結後のお話


◇夏の午睡◇

遠くで蝉の声。
庭には遊び終わった浅く丸いプールが伏せてあり、その脇には水着が干され風で揺れていた。
幼児用の小さなそれと並んで干されている水着やシャツの持ち主達は、今心地よさ気な寝息を立てていた。
そう言えば庭から聞こえていた声が聞こえなくなっていたな、と遅ればせながら気付く。
硝子一枚隔てた外とは違うひんやりとした涼しい和室。音を立てずに開いた襖から心地良く感じる空気が流れてくる。
目線の先。畳の上で遊び疲れて寝入ってしまったりゅうの傍らに、添うように横たわる唯一無二の存在。
近寄って屈み込んでも一向に目を覚ます気配が無い。
そっと。真司の髪を梳いてみる。柔らかいそれはサラサラと手からこぼれていく。
以前は怖くて起こさずには居られなかった。
けれど、りゅうを得て真司と過ごす時間を重ねてきた今、以前のような不安は大分小さくなった。
一度二人から離れ、和室の押し入れから綺麗に畳まれたタオルケットを取り出すと2人へとかける。
そうしてからおれも横たわり、真司を背後から抱き寄せた。
ふわりと香るのは、優しい彼の…真司だけの香り。
規則正しい寝息と涼しい室内。
安心出来る空間はおれを容易く眠りへと誘う。
ゆっくり目を閉じたおれは知らない。
少し前から真司が目を覚ましていて、抱き寄せた瞬間に柔らかい笑みを浮かべていたこと、なんて。

END

頂きもの

 


 

菜月さん、本当にありがとうございました!