◇日常after◇

前回頂いた『日常』の続きをいただきました!
今回はDesireから帰ってきたの真司と岳里を予想して書いてくださいました。しかも今回は脇役(同級生)がさりげない活躍をしてくれています(笑)
どうぞみなさまも菜月さまが描いてくださったふたりをお楽しみください


◇日常after◇

 

今日も相変わらず賑やかな校舎内。
授業全てが終わったからそれも無理はないと思う。
さっき担任に呼ばれた岳里は若干不機嫌そうに職員室へ向かった。不機嫌といっても相変わらず顔には出ていないのだけれど。
本当は今日、スーパーの特売日だから先に帰ろうかとも思った。でも実際にそうしたら拗ねてしまいそうな気がする。
今日買う予定の食材、大半は岳里が食べるし正直荷物持ちの協力は欲しい。岳里が来る来ないで買える量やプラスアルファも変わる。
それに…何だかんだで岳里と並んで買い物をするのは結構好きだから。
そんな訳でのんびりと荷物を纏め、携帯をいじって岳里を待っていた。
因みに待ち受けはりゅうの笑顔。1日に何回かは見て癒されてる。

「居たっ!野崎っ」

唐突に開いていた前の扉側から声を掛けられた。
見ると、すっかり顔馴染みになった運動部の部長が居る。
今日はバスケ部だ。昨日は陸上部でその前は確か剣道部とテニス部だった。
放課後、岳里の所に部長が来るのは大抵が助っ人要請だ。
違うクラスの彼は走ってきたらしくまだ息が切れている。

「野崎。今日岳里は休みか?」

教室内を見渡しながら歩み寄ってきた彼は、焦ったように聞きながらおれの隣の空いた机に腰掛けた。

「先生に呼ばれて職員室」

簡単に説明して携帯を閉じる。
因みにおれはまだ野崎姓を名乗っている。
Desireから帰り、岳里とは家族になったとはいえ、突然名字が変わるのも余計な詮索を受けそうだからと話し合って決めた。
岳里はあまり納得していないようだったけどそこは譲らなかった。
クラスメートからすればある日突然、何の接点も無かった俺が岳里姓になる状況だ。追求は岳里よりおれにくるのは明白。
これに関しては兄ちゃんが岳里を説得してくれた。といっても実際はおれのいない所での話し合いになってから詳しくは解らないけど。

「今日は助っ人要請?」
「勿論。本当は部活に勧誘したいけど、優先することがあるとはっきり言われてるからさ」

肩を竦めたバスケ部長は扉を見遣る。

「いつの試合?」
「今度の土曜日。あ、野崎も岳里に言ってくれよ~」

部長がおれに向き直り両手を合わせてくる。

「私、岳里君に言うより野崎君に頼んだ方が早いと思うんだけど」

部長が椅子にしている机の持ち主、つまりおれの隣席女子が会話に加わってきた。

「…そうなのか?」

部長が女子の言葉を疑うように呟いた。
女子はにっこり笑って部長とおれを見た。

「試してみたら?」

…そうは言っても。Desireから帰ってきた岳里は前より助っ人に頷かなくなってるんだよな。

「……真司」

ふと岳里の声が降って来た。
見るといつの間にか教室へ戻ってきていたらしい岳里が、おれを見ていた。
帰り支度も済ませ、直ぐ傍に立っている。

「野崎君」

何処か楽しげに呼ぶ女子に部長もおれを見た。
…仕方ない。

「なあ岳里。今度の土曜日なんだけどさ」

そこまで話した時、岳里の目線がおれから部長に移った。
部長の背筋がピンと伸びる。

「バスケ部が助っ人になって欲しいんだって」
「ほ、報酬はこれっ」

部長が慌てて岳里へ茶封筒を渡す。でも岳里はそれを受け取ろうとしないまま口を開いた。

「…断わ…」
「岳里君。もし出るなら野崎君がお弁当作るって言ってたよ」

岳里の言葉と女子の言葉が重なった。
え。おれそんな事言ってない。
途端に岳里の首がぐるりと回りおれを見た。

「あ、うん。勿論作るし見に行くつもりだけど」

おれの作るご飯なんか毎日食べてるのになんでそんな期待に満ちたような眼をしてるんだ?
すると。

「解った土曜日だな。…帰るぞ真司」

岳里はおれの荷物を奪うように取ると、空いてる手でおれの腕を掴み歩き出した。

「うわっ待てよ岳里!…それじゃまたな」

半ば岳里に引き摺られるようにして教室を後にしたおれは知らなかった。
封筒の中身が某テーマパークのフリーパスだったことと…。

「フリーパスより野崎の弁当?」

眼を白黒させてるバスケ部長と。

「岳里君への頼み事ならやっぱり野崎君にだよね」

頷く隣席女子が実は男子バスケ部マネージャーだということを。

END

頂きもの  おこぼれ話

 


 

菜月さん、本当にありがとうございました!