◇薬師ケイ~真実~◇

今回は前作『琥珀』に登場した“彼”の真実になります。
まだ菜月さまの、この作品より以前のものを読んでいない場合、先にそちらに目を通すことをお勧めいたします。
※Desire本編メンバーは出ておりません。

以上のことを踏まえた上でお読みください


 

◇薬師ケイ~真実~◇ 

死は怖くない。
何故なら『死』はどんな生物にも『平等』に訪れるもの。
金持ちも貧乏人も関係ない。
…沢山の時間を生きてきた。色々なひとと関わり沢山の事を知った。
捨てられていたオレは気紛れな薬師に拾われて、薬師の知識を吸収しながら順調に歳を重ねやがて独り立ちした。
ソウに出逢ったのはその頃だ。
色々な街や村を渡り歩いていたオレが、初めて人に惹かれ一つの場所に留まった。
幸せな宝物のような記憶。
愛しく思う人と肌を重ねる喜び。穏やかな幸せ。
ソウと共に暮らして数年が過ぎた頃だった。
二人の血を引く新しい命がソウに宿った頃から身体に違和感が現れ始めた。
ゆっくりとでも確実にそれはオレの身体は…若返り始めた。
病気なのか呪いなのか。
原因は全く解らない。だけど一つだけ確かなのはもうこの場所には居られないこと。
ソウが暮らしていけるだけの財産を残し、オレはまた各地を回り始めた。
薬師という職は有り難いことにどの場所でも重宝され生きていく事には困らなかった。
緩やかに若返り続ける身体が、14~15歳位にまでなった時。
小さな山間の村で、薬草摘みの時に知り合ったのが身体年齢は近そうなシリウス。
強い魔力をその身に宿す青年レオンハルトとも其処で出会った。
白銀の髪と蒼い目のレオンハルトは強い魔術師故に権力者に狙われていた。
あの日。レオンハルトを狙う光を庇ったオレの身体は酷く衰弱した。
正直、もう生き抜くのは無理なのだろう。
けれどやはり死は恐ろしくはなかった。
それよりも気にかかるのはレオンだ。思い詰めた瞳からはどうしてもいやな予感しかしない。
オレは医者に二通の手紙を何とか託し眼を閉じた。
一通はシリウスに。もう一通はソウへ宛てた。
レオンにはシリウスのような強い人間が必要だと思う。幼いながらも眼に現れていた強さは誰でも持てるものではない。
ソウは勘が非常に鋭い人だから、時間はかかっても手元にさえ届けばこれがオレからだと分かってくれる筈だ。
眼を閉じると懐かしい顔ばかりが浮かぶ。
きっとあの幸せが無ければオレはこれまで生きてこれなかった。
死を目前にして何となく解った事がある。
オレの身体には何かの血が…呪いかは解らないが…何かが多分受け継がれていたのではないか、と。
多分それは『新しい命』に受け継がれていくべきもの。
だから新しい血を継ぐ者が出来た途端身体に変化が訪れた。
あの時も今も心の半分はソウに向いている。
…ソウの元に居たかった。許されるなら己の子をこの腕に抱きたかった。
ソウと生まれた筈の命を一目見たかった。
だからせめて願う。…ソウとあの子が幸せであるように、と。
強いケイの想いが影響したのか、単なる偶然なのかは定かではない。
シリウスとレオンハルトは数年後、彼と酷似した『ケイ』と出会う。
薬師『ケイ』の血を引くのだと知らないままに…。

END

頂きもの

 



調理師ケイさんは、本名はケイトさんと言うそうです(以後薬師ケイさんと区別するため、ケイトさんと呼びます)

ケイトさんのご両親が今回真実を語ったケイさんであり、そして新たに登場しましたソウさんになります。

菜月さまより頂いたソウさんの資料をご紹介させていただきますね。
ソウさんはケイさんのパートナーであり、ケイトさんの生みの親になります。
一時的な両性であり(出産時のみ身体が変化)、普段は男性。
ケイさんが姿を消した後、ケイトさんを出産し、現在も生存されており、独り身ですが前向きに暮らしているそうです。

次にケイさんについて、向梶から少しご説明させていただきますね。
ケイトさんがソウさんのお腹に宿った時を堺に、突然身体が若返り始めます。(ケイトさんに何かが受け継がれたから)
その後かつてのように再び放浪し、レオンハルトさん・シリウスさんと出会ったわけですので、二人はケイさんの身に起こっている現象についてはご存じなかったようです。

ケイトさんは今はまだ幸せになる途中であると思うのですが、無事、ケイさんの願いが届くといいなと思います

菜月さん、ありがとうございました!