映画観賞

 

 視線の先で流れるのは、繰り返し鑑賞しているお気に入りの作品だ。二十年ほど前に撮られた時代劇ではあるが、俳優たちの演技はさることながら、色あせることないその時代を切り取った風景や人情で紡がれていく人々の絆は激しくも美しく、きっとこれならば龍之介も満足だろう。龍之介の感想はまっすぐであるので、その実直な意見を聞くのが楽しみだ。
 ちらりと隣に目を向ければ、ソファに肩を並べている龍之介が、じっと真剣な眼差しで画面に集中している。その様子に満足しながら、龍之介が用意してくれていたハーブティを一口含む。
 優しい香りに淡い味わいは、近日の仕事の多忙さを癒してくれる。
 ナギも画面に目を戻したが、自分でも気がつかないうちに、龍之介に寄りかかり眠りについてしまった。

 

 

「――ナギくん?」

 ふと肩にかかった重みに、集中を研ぎらせた龍之介は振り返って、自分に寄りかかり目を閉じるナギに静かに驚く。
 だがすぐにその口元を和らげると、起こさぬように気を付けながら一度だけ柔らかな髪に頬を寄せ、それからまた画面に視線を戻した。

 おしまい

 2018.10.3

 その後→ 安心の中

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