歌声

 

 夕食の後かたづけを終えた龍之介が、ソファにくつろぐナギのもとに向かえば、彼はイヤホンをつけてそれに耳を傾けていた。


「なにを聞いているの?」

 隣に腰を下ろしながら尋ねた龍之介に気がついたナギは、ただ微笑み、なにも言わずに片方のイヤホンを外して差し出す。
 随分と機嫌がいいようだ。受け取り、ナギを満足させている曲を聞くため自分の耳にイヤホンをつけた。

「あれ? これは、おれの……」

 流れてきた音楽に驚いた龍之介の表情を見ていたナギは、まるでいたずらが成功した子供のように笑う。

「言ったはずですよ。アナタの歌声はとても好きですと」

 おしまい

 2018/10/21 

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