きみのこころ

 新人の指導と同僚の病欠によって仕事が立て込んでいたユールが、三日ぶりに家にやってくる。 その事実に、デクは椅子に腰を下ろしながらも落ち着きなく、玄関の扉と机においた自分の手に視線をさまよわせた。 準備はできている。大丈…

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Desire

 満月のような金色の瞳に、柔らかそうな紺の髪というどこか現実場離れした色合いながら、写真で見た幼い頃の自分にそっくりな子供。 じっとこちらを伺うような視線に戸惑いながらも、なにか行動しなければと目線を合わせるためにしゃが…

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山神さまと花婿どの

  虚の中で腰を下ろし土色の顔をするミノルに、山の神はきっぱりと首を振る。「今日は水神が来るが、おまえは会わずに休んでいろ」「いえ、大丈夫です。お会いするのは久方ぶりですし、わざわざお越しいただくわけですから、…

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月下の誓い

 【終の棲家】 なべで木苺を煮立たせていたシャルテナオスに声がかけられる。「シャオ」 手を止めて振り返ると、入り口の壁に背を預ける男がいた。男はシャルテナオスのいる場所に目を向けいるが、その視線は鍋の方に向けら…

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