おれが照れてどうすんだ!

  それは、ジィグンからの一言だった。「岳里の表情を変えたい?」「そう。あいつ、おれたちと再会してもいつもの顔だろ? たまにはべそべそしたりとか、にこにこ笑わせたり、驚かせたりしてやったり、そんな顔を見てえんだ…

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1月1日

 身支度を整えた息子たちが部屋から出てきたのは、ほぼ同時。 炬燵でまどろむおれと岳里に振り返り、りゅうは笑顔を見せた。「じゃあ、先輩のところに行ってくるね」「おれもダチと行くから」「竜司、しっかり暖かくしていけ」「わあっ…

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雨の日

  本屋から出た途端、灰色のアスファルトにぽつりと小さな染みができる。それは次第に数を増やし、瞬く間に乾きの色を雨で塗り替えてしまった。 厚い雲に覆われた空を見上げて溜め息をひとつつく。(やっぱり降り出したか)…

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クリスマスの朝

  サンタさんはきっと忙しいからぼくはいい、と。しんちゃんたちと一緒にクリスマスを過ごせればいいんだなどといじらしいことを言うりゅうをどうにか言いくるめ、サンタへプレゼントの希望を書いた手紙を用意させる。そして…

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いつもの日常、いつもの朝に

 ピピッ ピピッ 聞こえる目覚まし時計のアラーム音に、一度目を擦ってからそれを止める。 沈黙したそれの腹をみて時間を確認していると、自然に出てくる欠伸。噛みしめることなく大口を開けて息を吐いていると、やつも起きたのか、隣…

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ひとくちの報い

 岳里が願うのであればそれをなるべく叶えてやりたい。そう常日頃思っていた。 普段から決して口数の多いわけではない、何でも一人でこなしてしまえるやつが、おれに何かを頼むことが稀だからというのもある。今まで沢山のおれの願いを…

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生きているからこそ

 ふと目が覚めると、おれがソファの上、隣に座っていた岳里の肩に寄りかかっていた。 おれがつけたままにしていたテレビは消され、ただ岳里が本のページを捲る音が静かに響く。それが心地よくて、再びうとうとと瞼が閉じようとする。け…

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  ふとアロゥに呼ばれた気がして部屋に戻ると、まだ日のある時間であるにも関わらず彼は寝台の中にいた。 傍にゆくと、どうやら起きていたらしいアロゥはゆっくりと目を開け、微笑かける。「フロゥを呼んできてほしい」 ジ…

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「えっ、あっ……」 ぴくりとジィグンの身体が震える。戸惑った声が頭上で聞こえるも、吸いつき、口の中で乳頭を舌先でいたぶる。 身を捩って逃げようとするのを咎めるよう、左側をまたきつめに摘まむが、いてえ、という声はそうには聞…

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 どうにかなったものの、ヤマトとコガネに出鼻をくじかれ、他の隊長たちの説得も難航するかと危惧していたハヤテだったが、残りはことのほかあっさりと同意を得ていくことができた。 獣人が獣人を呼び出すのに興味を持った者もいれば、…

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