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  微かに睫毛が動いた気がして顔を覗き込むと、ゆっくりと瞼が持ち上がる。「フェリクス」 しばしぼうっとしていたが、春一を認識したのか、何度か瞬くうちに次第に瞳の焦点が合っていくのがわかった。「は、る……」「そうだよ。無理…

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17

 倒れたフェリクスはそのまま目覚めることはなく、急ぎ城に戻り、すぐさま侍医に容態を診てもらった。 途中までは王都の散策を問題なく楽しんでいたはずだ。何か原因があるとするなら強盗の一件だろうと、一連の出来事の経緯をなるべく…

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16

「春一っ」 悲鳴のようなフェリクスの声が響くと同時に、春一と男との間に薄い膜が現れた。 男の手は半透明の膜に遮られ、春一に触れることなく弾かれる。 驚愕を露わにする男の顔を目の当たりにしながら、腕に着けていたバングルが熱…

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  時折いたずらをするように春一を翻弄してくるフェリクスに踊らされつつ、二人は王都を回って楽しんだ。 美味しいものも食べて、珍しいものも見て、かつこっそりと実行していったまじないも想定より順調に消化していく。 城を出てす…

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   馴染の店主からお金と引き換えに串焼きを受け取り、屋台から少し離れて通行の邪魔にならない場所に移った。 その間にも渡される直前まで炙られていた肉はじゅわじゅわと音をたて、美味しそうな匂いで春一たちを魅了する。移動のほ…

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 「……実は、外出は中止しようかと考えているんです」「お二人とも楽しみにしていらっしゃったのでは?」「そうなんですけどね。でも最近、フェリクスの調子がよくないみたいなんです。だから取りやめてしっかりと休ませたほうがいいか…

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  気をつけたほうがいいーーそう、フェリクスには言われていたのに。 二日前の会話を思い出しながら、春一はどうしたものかと内心で頭を抱える。「ハル殿、どうかされましたか?」「いえ――」 にこやかに声をかけてくるのは、注意す…

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  鼻にかかったような間抜けな音に慌てて口を塞ぐと、じっとこちらを見つめるフェリクスと目が合った。「……すみません、強かったですか?」「あ、いや、そうじゃないよ。ちょっとくすぐったかっただけ。へ、変な声出してごめんな」「…

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  部屋に戻った頃には春一もどうにか気を取り直し、お気に入りの長椅子に並んで座ってセオドアが淹れてくれたお茶で一息つく。「でもせっかく早めに仕事が終わったってのに、おれと過ごすのいいの?」「ご迷惑でしたか?」「いやいや、…

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  昼食後はそれぞれ家に帰ったり、親の都合で残る子、自主学習をしたりするなど各々の予定に合わせて自由になる。 春一は教室となる一室に留まり、残る子どもたちの見守り兼相手役を務めた。セオドアも引き続き傍に控え、他にも手伝い…

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