森の中をひたすらに進むだけの旅は、皆の考えではそれほど苦労しないものと思われていた。
 リアリムも薬草を売りに何度か行ったことのある隣町。人の足で二日程ともあってそれほど遠いわけではないし、凶暴な獣も魔の者も、野盗にも滅多に遭遇することのない穏やかな旅路である。森に迷いはすれども何者かに襲われることなど年に二度三度程度で、そのため現れる可能性の高いヘルバウルにしか警戒しなかった。しかし予想に反し、旅は度々危険に触れるものだった。
 道の途中、幾度も魔族に襲われた。動物に姿の似た魔獣と呼ばれる者どもではあったが、黒き狼と称されるヘルバウルではない。兎型、とはいっても猪ほどの大きさのピンナと、肉食ではなく人も襲うことは少ないとされる鹿型の魔獣ツェルバ。それに山犬のようなバウルも含まれていた。
 比較的平穏な森とされる場所に、魔獣と遭遇することすら稀である。しかしリアリムたちは三度も襲われ、そのすべてラディアが斬り捨てた。
 ラディアは自らを剣の腕がいいと語っていたが、その言葉に偽りはなく、やはり彼は勇者たる者とともに旅をする剣士であった。その腕前は相当なもので、動きが制限される狭い木々の間といえども器用に剣先を操り、恐ろしい形相をした魔獣どもの息の根を刈り取る。
 リューデルトはリアリムを守るためか傍らから離れず、しかし油断せず、いつでも魔術を放てるようラディアの戦う姿を見つめていた。しかし勇者は腰に携えた剣に指先を向けることすらせず、いつもの無感情な瞳でただラディア一人が戦うのを眺めているばかりだ。いつでも参戦しようと構えるリューデルトとは違い、まるで傍観者であるようにリアリムには見えた。
 いくらラディアが息も乱さずとて、仲間一人に戦わせるものなのだろうか。魔術師であるリューデルトが支援に徹しようとしているのはまだわかるが、勇者は武器を持っている以上それで敵と対峙するのだろう。実際彼は剣をもってしてリアリムに襲い掛かろうとしていたヘルバウンドの首を刎ねたこともある。
 飾りでもなく、勇者の名に恥じぬ剣士であるはずだ。だがそれでも彼は三度の戦闘で、一度として戦いに参加しようとはしなかった。
 勇者とは魔王と対峙するもの。であるならばその眷属たる魔族どもとも敵対しているはずであり、倒すべきはずの相手でもある。それなのに戦いのすべてを仲間任せであってもよいのだろうか。しかし、勇者であるからこそ、みだりに力を使おうとはしないのかもしれない。
 世界の命運をも時に握るとされている、光に属する者すべてに祝福され愛される御子。その血筋に問わず、もっとも貴き魂を持つこの世にただ一人の方。生来のつわものであり、魔王と決する重責を背負わされている彼は、戦うことがさだめと言っても過言ではない。だがだからこそ勇者の力もまた貴重なものであり、森で遭遇するような程度の低い魔族に構ってはいられないのだろうか。
 一人で剣を振るうラディアも参戦しようとはしない勇者に反発するような素振りはない。リューデルトもまた、この状況について不満を抱いている様子はなく、三人にとってはこれが当たり前なのだろう。
 勇者などこれまで雲の上の人、それどころかどこか遠い国の神話のような存在と思っていたリアリムは、平民の自分にはわからない事柄もあるのだろうと、戦わぬ勇者への疑問は胸の奥にしまい込んだ。
 魔の者との衝突は多かったものの、ラディアの剣技により、リアリムたちはさして苦難なく森を抜けることが出来た。すぐに見えた目的の町、ワンナに足を踏み入れたのは、リューデルトの予想通り日が暮れる間近のことだった。

「とりあえず今夜は宿をとりましょう。町長のもとへは明日向かいます。先にわたしどもの用を済ませたあとにリアムのことを頼むので、それまではよろしくお願いいたしますね」

 にこりと笑んだリューデルトに、リアリムはありがとうと感謝を口にして頭を下げた。
 部屋は全部でみっつとられ、ひとつは勇者が一人で入る。それは予想がついていたが、なんともうひとつの一人部屋を与えられたのはリアリムだった。残る二人部屋に、リューデルトとラディアが相部屋として眠るという。
 勿論リアリムは、他人の金でそんな贅沢はできないと過ぎたる処遇に首を振った。しかしリューデルトたちは頑として譲らず、気付けばリアリムは宿屋の一室にある寝台に腰を下ろしていた。
 一人になったところで懐から抜け出してきたヴェルを肩に乗せながら、月光と町の明かりだけで部屋の中で、ただぼうっと何もない壁を見つめる。
 ヴェルが首裏を周り反対側の肩に移っても、リアリムはそれに気づいていなかった。
 旅の道中、常に勇者、リューデルト、ラディアの三人が眠るときさえ傍らにいた。久方ぶりの独りきりとなったが、リアリムはゆとりある寝台に寝転がり眠りにつくでもなく、ただただぼうっとそこに存在する。考えることさえ停止していた。
 ぽっかり空いた時間など、明日を迎えればしばらく来ることはないだろう。今のうちに考えておかねばならないことは山のようにある。今後の生活や集落を襲ったヘルバウルの群れへの対処、今回のことに関してどう勇者たちにお礼をすればいいのか。
 呆けている場合でないのはわかっていた。だが何もせず、何もできずただ無為に時を過ごしていく。
 あの惨状を目の当たりにしても、現実に打ちひしがれたとしても。魔獣に襲われ死にかけたとしても、飛び散った血があしもとに跳ねても。飯を食べても、眠っても、旅をしても、ここまできても、それでも未だに自分が夢の中にいるように思えた。確かに現実を見たし、胸も張り裂けそうなほどに痛み、今でも息苦しく思う。しかし気を抜くと、悲しむよりも先に脱力したような、そんな無気力に襲われる。
 ふと窓際からかたりと音がし、リアリムはそこに目を向けた。見ればヴェルが外に出たそうに硝子に張り付いている。
 リアリムは立ち上がり、鍵を外して窓を開け放った。その瞬間ふわりと夜風が舞い込み、リアリムの頬を撫でていく。
 家屋はまばらで自然に溶け込むように存在していた集落とは違う匂いがした。ヴェルもそれを感じているのか、上に向けた鼻先をひくひく動かす。
 この町とて森にほど近いが、それでも木々を切り払い、人々は家の両隣に同じく建物を建てて密集して暮らしている。月が浮かぶ夜といえどもまだ酒を出しては騒いでいる店もあり、完全な静寂も暗闇でもない。
 ワンナは大陸の端にある然程大きくはない田舎町に違いないが、それでもリアリムが暮らしていた集落よりは人がいて発展している。だからこそ風に乗って届く匂いも慣れ親しんだものとまったく違うのだろう。
 ――ねえ、おにいちゃん。わたしも町につれてってよ。
 ふと頭に残響のように思い起こされた、まだ幼い甘え声。
 これから摘み持ち帰ってくる予定の薬草を兄が町に売りに行くことを知った妹は、ねだるために笑顔を浮かべ足元にすり寄ってきた。それに自分は、苦笑を返したのだ。
 もう少しリアーナが大きくなったらつれてってやるよ――そう言って、ふくれっ面を見せる彼女の頭を撫でたのだった。
 これまで呆けていたリアリムは、激しい胸の痛みに顔を歪ませ、胸元の服を強く掴んだ。
 もう少し。彼女の成長が訪れるのを、当たり前のように思っていた。
 なんにでも興味を示すリアーナは、目を離せばすぐにふらふらとどこかへ行ってしまう。そんな彼女を見知らぬものの多い町に連れて行けば迷子になるのはわかりきっていた。だから我慢を覚え、自分が商売をしている間も大人しく待てるようになれば、いつだって町につれてってやろうと思っていたのだ。そのときには長く伸ばした髪に似合う髪飾りでも買ってやろうと。高いものは無理だが、なるべくリアーナの笑顔に似合うものを与えようと。
 だがもうリアーナが成長することはない。実際に笑顔を見せてもらいながら選ぼうと思っていたが、髪飾りそのものも必要なくなってしまった。
 まだ九つの少女だった。多少ませていたところもあり我儘なところもあったが、根は素直で優しく、花のような笑みが愛らしかった。兄である自分を慕ってくれて、雛のようにいつも後をくっついてきた。

『おにいちゃん』

 心に思い浮かべる少女の声がした気がして、思わず後ろを振り返る。しかしそこには誰もおらず、ただ外へと通じる扉があるだけだった。
 リアリムは震えるほどに握りしめていた服をそっと手放し、寄った皺も直さないままにふらりと歩き出す。そのまま扉を開け、廊下に出た。
 ふらふらと夢うつつの世界でもうこの世にはいない妹の姿を探しに歩き続け、突然肩に感じた痛みで現実に呼び戻される。
 リアリムが我を取り戻した頃には、いつの間にか部屋から見知らぬ建物に囲まれた外で、身汚い痩せた男に肩を握りつぶされるように掴まれていた。そして首筋には曇った刃が押し付けられていた。

「金目のものを置いていけ」
「――っ」

 酒やけたような声、刃のように濁った瞳に、リアリムは身体を強張らせ息をのむばかりだった。
 わけがわからなかった。自分は宿屋の一室にいたはずで、気がつけば窮地に陥っている。しかもどうすることもできない。
 集落の仲間たちと家族を皆失い、故郷からも追われたリアリムの精神は深く傷ついていた。それは妹との思い出を振り返るうちに、自覚がないままに身体を動かすほどだった。
 連れて行ってやらなくては、と心の深いところで思い、そしてそれを実行すべく外に出てしまったのだ。
 もう、リアーナはいない。もう約束を果たす必要はない。リアリムはそれをわかっていたが、わかっていてもなお信じたくないと心底からの叫びが無意識の行動を起こしていた。
 部屋を出るというその意識すらなかったのだから、我を取り戻したリアリムが混乱するのは仕方のない話だった。しかしそんなことは強盗には関係ない。
 冷めぬ戸惑いと唐突に突きつけられた凶器、怯えていつまでも金をとり出せずにいるリアリムに、男は焦れる。

「早くしろ」

 短剣の刃が肌に食い込む。手入れを怠り切れ味が鈍いおかげか、ただかたいものが押し付けられただけのような感触で傷はできなかった。しかしそれ以上進められるとさすがに皮膚が裂かれるだろう。
 頭は真っ白だった。何故ここにいる、どうして短剣を突きつけられている、そんな疑問ばかりを繰り返していたが、心臓の男に掻き消されそうになりながらも聞こえるざらついた男の声に何も考えられなくなる。

「くそっ、さっさとしねえと殺しちまうぞ……!」

 ひっと喉の奥を引き攣らせるばかりでなおも動けぬリアリムにしびれを切らし、男は肩を掴んでいた手で背中を突き飛ばした。
 押されたリアリムはそのまま前に倒れ、石畳に打ち付けた身体の痛みに呻いているうちに強盗に背後からのしかかられ、放り出していた右手を踏みつけられる。頭には手を置かれ、痛いほどに頬が地に押し付けられた。
 冷やかさも失い多くの不浄を纏った切れ味の悪い短剣の先端が、今度は首裏を突く。だがそれは脅しではない。

「もたもたしてるおまえが悪いんだからな!」

 一度狙いを定め、振り上げられる凶刃。
 見えないまでも気配で察したリアリムがのしかかる重みに咄嗟に丸々こともできず、ただぎゅっと目を瞑った、そのときだ。
 振り下ろされる刃とは別のところから風を切る音が聞こえ、何かがぶつかる鈍い音の次には強盗の悲鳴が響いた。手の上に置かれていた足が外れ、身体にかかる重みも放り投げられたように退く。
 突然の解放に、リアリムは四つん這いになりながらも数歩分進んで振り返った。
 強盗は尻餅をついたような格好で、短剣を掴んでいたはずの手を押さえ苦悶の表情を浮かべていた。離れた場所に鈍っている刃を見つける。
 何が起こったのかと困惑するリアリムだったが、ふと視界の端に動くものに気が付き、そちらに目を向ける。
 ゆったりとした足取りで歩み寄ってきているのは、宿屋で就寝しているはずの勇者だった。

「ゆ、ゆう――」

 彼を呼ぼうとして、強盗の存在を思いだし咄嗟に口を噤む。いくら存在を隠していないとはいえ、今この場面で口にするのは憚られた。
 勇者は手にしていたらしい小石を宙に投げては受け取り、それを繰り返している。それを見て、リアリムはひとつの可能性を思い浮かべた。
 手を押さえ痛がっている強盗と、遠くに投げ出された短剣。そして勇者が持つ小石。
 勇者が強盗目がけ石を投げつけ、それは見事に命中し、男から刃を手放すよう仕向けたのではないだろうかと、そう考える。
 その想像は的中しており、リアリムの窮地を救ったのは闇に紛れるようにして現れた勇者だった。しかしリアリムが答えを知ることはなく、勇者は遊んでいた石を掴み、薄い唇を動かす。

「消えろ」

 それはあのとき、ヘルバウルにも告げた言葉だった。
 表情はないのに、瞳の奥底は冷え冷えとしている。澄んだ色をしているのに、まるで沼がそこにあるように、彼の目は輝きが鈍かった。
 リアリムも、そして強盗を働いていた男も、彼の深い闇を抱えている瞳にのまれ、遠くに微かに聞こえる喧騒さえも遠のき、一瞬完全なる静寂の訪れを感じた。
 勇者の眼差しが僅かに鋭くなり、それに先に我を取り戻した男が背を向け走り出す。彼は乱入者が誰であるのかまだ知らないが、その底知れぬ強さを肌で感じて逃げ出したのかと思った。しかし彼はとあるものを目指しており、向かう先にあるものにリアリムが気づいた頃には、先程聞いたのと同じ風きりの音がした。
 勢い勇者の手から放たれた石は、ひゅんと直線を描き、そして走る男の頬をかすめ、その先で石畳にぶつかり跳ね返る。

「今なら見逃してやる。気が変わらないうちに早くしろ」

 平坦な声音だが、一分の隙もない冷やかさは、彼が容赦しないことをひしひしと伝わらせた。
 男は武器を求めることなく、尾を巻くようにして逃げ出し、脇道に入り姿を消す。荒い足音も遠ざかり、やがて聞こえなくなった。
 完全に気配が消えた頃、勇者は緩慢な動きでリアリムへ目を向けた。

「勝手に出歩くな」

 ぴしゃりと静かながらに叱られて、リアリムはただ小さくなることしかできなかった。口先で消える謝罪をし、ふらつく身体でどうにか立ち上がる。
 ふと顔を上げれば、勇者はすでに歩き出していた。これまで恐怖に竦んでいた足をどうにか動かして、慌てて後をついていく。
 いつの間にか来てしまっていた場所だ。ここがどこかもわからず、当然宿屋への帰り道も知らなかった。
 リアリムが後ろにいることを勇者は知っているはずだが、彼は長い足を緩めることなく進み続ける。身長にそれほど差はないはずだが、リアリムはやや速足になってどうにかついていった。それでも徐々に距離が開き始め、見える背が小さくなっていく。
 置いて行かれているのに不思議と心細さはなかった。この暗闇の中でさえ闇を跳ねのけているように、月明かりに輝く髪を目印にリアリムは歩き続ける。
 やがて宿泊していた宿屋を見つけ、リアリムは足を止めて看板を見上げる。その間にも止まることなどしなかった勇者は、屋内に吸いこまれるように消えていった。
 駆け寄り勇者に続いて扉を通り抜けると、階段を登っていく姿を見つける。リアリムもやや急いて上に行くと、勇者は最後まで一瞥も向けぬままに自身に宛がわれた部屋にいく。
 音もなく扉が閉まっていくのをちょうど階段を上り終えたところで見ていたリアリムは、一度は自分の部屋に戻った。
 疲れた精神を癒そうと寝台に横になろうとして、ふと立ち止まる。
 この二日間勇者とともに旅をしてきたが、彼がどういった人物であるのか、それをわかることはなかった。
 知っていることは、彼が勇者であること。そしてとんと口数が少なく、必要最低限にしか言葉にしないこと。戦いには参加しない。笑わない、表情にまるで変化がない。本来は気性が荒いのか、それとも繊細なのか。人見知りなのか、傲慢なのか、気力がないのか。
 そんな曖昧な中にあるひとつの事実、それは彼が二度もリアリムを救ってくれたということだ。
 一度目はヘルバウルから。二度目は悪漢から。どちらもまず警告し、それでも向ってこようとする相手には相応の反応をした。それは魔獣であろうが人間であろうが変わりない。
 恐らく、あの男が短剣を手放しておらず、それで切りかかっていたのなら、ヘルバウルの頭と胴が別れたようなことが起こっていたかもしれない。逃げ去る強盗を見ていた勇者の瞳はそれだけ冷めているように見えた。
 だが、間違いなく勇者はリアリムを助けてくれたのだ。勇者の介入がなければ、ヘルバウルにしろ、あの男にしろ、リアリムの命はなかっただろう。それはいくら彼が腹の知れぬ表情のままの行動だとしても、異種族だろうが同族だろうが容赦なく反撃しても変わることのない事実である。
 そもそもなぜ勇者は、夜にあんな場所にいたのだろうか。まさか自分と同じくして気づいたらそこにいた、などと間の抜けた理由などではないだろう。
 リアリムを助けた後はすぐに宿屋に帰ってきた。そのおかげでリアリムも戻ることが出来たのだが、そもそも勇者は用があって外に出ていたのではないのか。それとも、その用事は済んだのか。それとももしくは――
 考え半ばに内心で頭を振った。可能性でしかないそれはあまりに小さく、そしてリアリムにとって頷けるものでもない。
 ただ自分は運がよかったのだと、もう思案することは止め、再び部屋を出る。そして勇者の泊まる部屋の前に行き、しばらく逡巡した後、一度だけ戸を叩く。
 夜分ということもあり、控えめにしたそれに返ってくるものはない。それを想定していたリアリムは扉越しに、そこにいるはずの相手に声をかけた。

「その、先程は、ありがとうございました」

 伝えるべきことを伝え、リアリムは今度こそ部屋に戻って寝台に寝そべった。いつの間にか懐に潜り込んでいたヴェルが、潰れる圧迫感から逃れるべく出てくる。

「ああ、ごめんな。そうだ、飯やらないと」

 短い毛を整えるよう目の前で顔を洗うヴェルに、昼間のうちに採取していた小さな木の実を腰にある小袋から取り出し、与えてやる。
 赤い粒を受け取ったヴェルは、リアリムの眼前で口に入れ、頬に溜めていく。いくつか渡したところで満足したらしい彼は寝台の下に向かった。
 友の姿が消えるまで見守ってから仰向けに直り、息を吐く。肺の空気をすべて入れ替えるよう、深く、深く。けれども気持ちが切り替わることはない。
 考えなければならないことは多くある。しかしリアリムはすべてから目を閉じ耳を塞ぐよう、静かに眠りについていった。

 

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