小話

 本編完結後。くっついた後の二人。特に中身はなく、攻が浮かれているだけ。※診断メーカーのお題「キスするとでも思ったか?」から書いたものです。  旅の道中、見晴らしのよい草原とその傍らに流れる細い川を見…

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花食むきみに

 本編完結後。終章から一悶着後の旅立ちのこと。憶えのない名があると思いますが、それが終章にて語られなかった勇者の名です。  シュカに旅の仲間に誘われなかなか答えを出せずにいたリアリムだが、周りからの後…

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終章

  勇者と魔王の勝敗の行方は、勇者に軍配が上がった。 勇者は西の大陸に降り注いだ癒しの花弁を降らせたとされ、人々に勇者の花であるシロサイカにかけて、再花の英雄と讃えられた。そのとき世界全土で人間たちは七日間にわ…

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花舞えきみに

  魔王は己の血に染まった指先で、天井が抜けた空を示した。「勇者さま、上を、見て」 導かれるまま上を見上げた勇者は目を見開く。 空からは幾億もの花弁が、地上に降り注いでいたのだ。 気がつけば勇者と魔王の周りにも…

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32

 「――わたしが魔物であった、といったな」 ふと幾度も魔王の言葉でも自分の胸中でも繰り返された、対という言葉。 それを思い出した勇者がまさか、と魔王を見つめると、彼は浅く頷いた。「そう。おまえとわたしの本来の性…

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31

  真なる魔王が舞い戻ったその日より、西の大陸にて魔王城が出現した。それは移動をすることもなく、消えることもなく、まるで勇者を誘うかのように道しるべとなる。 勇者たちは大河を越えて、導かれるままに魔王城を目指し…

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30

 「どうだ、リアリム。裏切られてつらいか。その男を失うことが悲しいか」 彼にとって、ラディアの死でさえ自分を苦しめるための材料なのだろう。そのことがひどく憎たらしく思えるが、もしかしたらそれさえも彼の計算のうち…

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29

  以前と変わらず魔王城の居場所の捜索と神殿巡りをするなかで、とある町に立ち寄ったときに新たな情報を得ることになった。 ヴェルを追いかけてきた少女が、ある神殿の歌を口ずさんだことでそれが知れたのである。 それは…

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28

  体力の限界を迎えいつしか眠りについたリアリムを寝かしつけてやる。跳ねのけられた毛布を掛け直してやったとき、静かに扉が開いた。 隙間から顔を出したリューデルトに呼ばれるまま、一度リアリムに振り返って寝顔を確認…

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27

  ひどく喉が渇く。身体が火照っていて、汗まで出ているのに、それなのに身体の芯が凍りついてしまっているかのように寒い。 息苦しくて、呼吸をしたくて、喉を掻きむしれば不意に手が動かなくなる。 誰かに掴まれているの…

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