※ 龍之介が鼻血を出しています
※ なかなか細かい矛盾点が直せず(通行人0人とか、陽射しが強いのにナギくんがサングラスなしとか……)、数日待ってみてもいい案が出なかったのでそのままにしちゃいました。ちょっと説明不足になってます。とりあえず、暑い日に二人でお出かけしていた106ということで。
映画を観終えた二人が昼飯をとる店を探しつつ、感想を言い合いながら歩いているところで、店先の日陰のないところに出ていたガチャを見つけたナギは、その内容を確認したところ、張り切って回すことにしたようだ。
財布を取り出したナギがいざ回そうとするが、一度手で目元に影を作りながら天を仰いだ。眩しそうに目を細める姿を近くの木陰から見守っていた10だが、振り返ったナギに呼び出されたので傍にいく。
「ここにいてください。そこで、ワタシを見ていて。ずっとアナタに見守られていたいのです」
背後に立たせられた十の強い視線を受けながら、ナギは満足したように笑って意気揚々とガチャを回し出す。
しゃがんだナギの首筋にうっすら浮かぶ汗が流れ落ちるのをみて、
(エロいな……)
なんてことを龍之介が考えてしまっているうちに、目当てのもとをゲットしたナギが飛び跳ねた。
「イエス! ついにシークレットゲット! 見てくださいリュウノスケ、やりま、し……」
言葉が途切れ目を見開いていることに疑問を抱いていれば、さっとティッシュを取り出したナギに鼻を押さえられる。
「な、なひ、ふん……?」
「ストップ。大人しくしてください。鼻血が出てます」
「え!?」
驚いた龍之介は、ナギの手に自分の手を重ねるようにして鼻を押さえた。
ひとまず近場のカラオケに入り、氷を恵んでもらい体を冷やすことにした。
タオルにくるんだ氷を首の下にしき、濡らしたナギのハンカチを目元にかける。長椅子に横になる龍之介の頭上に座るナギは、うちわであおぎ風を送ってくれた。
「……ごめんね。迷惑かけて」
「いいのですよ。今日は陽射しが強かったですからね。暑さにつよいアナタといえどものぼせてしても不思議ありません」
「……本当にごめん」
確かに肌を焼く直射日光の熱さの影響もあるが、実は君を眺めてエロいこと想像して鼻血を出してしまいましただなんて言えず、献身的な看病をしてくれるナギに申し訳なさばかりが溢れてくる。
「鼻血は止まりましたか?」
「あ……大丈夫みたいだ」
鼻に突っ込んでいたティッシュを抜いて様子をみるが、もう溢れ垂れてくるような感覚はなかった。
「それはよかったです。ドリンクももう少し飲んではいかがでしょう」
「そうするよ。ありがとう」
氷枕から頭を起こして、ナギが用意してくれていた冷えた烏龍茶を半分ほど一気に煽る。
ふう、と龍之介が一息つくと、うちわをあおいでいたナギの手が止まる。
「……リュウノスケ。ワタシはアナタに謝らねばなりません」
「え? ナギくんが、俺に?」
「ええ……実はあの時、アナタを日よけ代わりにしていました。そのせいでまさかあんなことになるとは……」
確かに、ナギがあんな風に龍之介に傍にいて、見ていて、なんてねだるなんて珍しいどころか不自然であった。だが、あまりに可愛くてなにも考えず言われるがままそこに立ち、そこで見つめていた。
自分の行いのせいで龍之介がのぼせてしまったと思っているのだろうか、しゅんと落ち込むナギの肩を龍之介はがしりと掴む。
驚いて顔を上げたナギに強く首を振った。
「な、ナギくんは悪くないんだ! あの……実は、俺もナギくんに謝らなくちゃならないことがあって」
「What?」
「その……な、ナギくんがエロいなあって思ってたら鼻血が出てきたんだ! 実はちょっと前から思っていて、さっきしゃがんでいるのを後ろから見ていたら、無防備な項が……その……ごめん!」
暑さに弱いナギは気温についていけずぐったりしているのは可哀想だとは思うのだ。早く涼しいところへいこうだとか、そろそろ水分をどこかで補給しなければだとか、色々対応を考える。だがその反面、気だるげな様子や汗ばむ肌は、暑さで赤らんでいる頬など、正直な話、情事の際を思いだしてしまった。
反省すべきは暑さを避けようとしたナギではなく、往来で在らぬことを想像し勝手に興奮した龍之介こそにあるのだ。
「――リュウノスケ、歩けますか?」
「え? ああ、もう大丈夫だよ。そもそもが熱中症とかじゃないからね」
「では、アナタの家に帰りましょう。この暑さです。お店はどこも涼む人で溢れかえっているでしょう。それならゆっくり家でアナタのご飯を食べて涼みたいですし。それに――」
「それに……?」
「アナタを利用したお詫びも兼ねて、家で水遊びでもしませんか? 汗も掻きましたし、すっきりしたいです。ですから、ついでにアナタも一緒に」
瞬時にして巡るナギとの水遊び。浴槽は長躯の龍之介でもゆとりある大きさがあるが、ナギと二人で入るとなれば膝を折り合わなければならないし、どうしたって肌が触れる狭さになる。とするとなると――
「もっ……もちろん! 賛成だ!」
両手を強く握り勢いよく答えた龍之介の鼻から、ちらっと赤いものが垂れてくる。慌てて机に用意していポケットティッシュで鼻を押さえれば、その様子を眺めていたナギが肩を竦める。
「Hm……まだ休憩は必要なようですね」
「ごめん……気合いですぐ止めるよ」
今日は格好悪いところばかり見せてしまっていると落ち込みながらも、相変わらず仕方のない人ですね、とナギが笑う姿が輝かしく見えた。
おしまい
2018.7.1