子作りする期間は基本大人しくしていろ、と岳里に言われたおれは、七番隊の手伝いをする時間を減らすことにした。岳里はそれでも続けるということにいい顔はしなかったけれど、もう少したてば絶対安静となって手伝いなんてもってのほか、っていう状況になってしまうため、できる今の内にとどうにか説得した。
 ただでさえ忙しい七番隊はおれという素人一人が抜けただけでさらに厳しい状態に追いやられるにも関わらず、特殊な事情から詳細を話せないまま手伝えなくなると言ったおれにみんな快く頷いてくれたんだ。その時は本当に、みんなの優しさが嬉しかった。
 だからこそ大人しくしてろとは言われていたけれど、注意はしつつも昼間は一生懸命働いた。夜は夜で執拗に岳里に意地悪く身体を遊ばれて、くたくたになりながらもまた朝から医務室へ顔を出して。
 そうしているうちにもあっという間に時は過ぎ。今日でもう、宝種を体内に入れてから五度目の夜を迎えた。そして今夜が、ついに岳里を受け入れる日でもある。
 だからなのか。今日の岳里は一段と執拗におれの身体を責めたてたててきた。もう自分が出したものなのか、潤滑剤だかわからないけれど下半身はぐちゃぐちゃで、でもそれを気にする余裕もなく、ただ声を堪えるのに必死になる。
 それなのに岳里はすっかり知り尽くしてしまったおれの身体を、過敏な場所をあえて触らないように淵をなぞったり、反対に中に入れた三本の指は音を立てながら前立腺を容赦なく刺激したり。
 今も口を押えるので手一杯の両手が守れない、がら空きの胸元に岳里の口元が落ちる。

「っん、は――」

 乳首を吸われて、首を振った。けれど岳里はちらりとおれの顔を一瞥しただけで離れようとはしない。その間にも下で動く手も止まることなく、おれはあっけなく二度目の射精を果たした。
 息も絶え絶えになっているとようやく指が引き抜かれ、岳里の顔も起き上がり離れていく。それを視線で追いかけていると、目が合った。
 一枚も残すことなくはぎ取られてしまったおれと違って、岳里はいつも着込んだままだ。ぎゅうぎゅうに窮屈を主張するそこでさえ未だおれの前で解放させたことはなく、今も開かされた足の間にある岳里の身体が少し動いただけで服に肌が擦れた。
 そんな刺激でさえ敏感になっているこの身体は、胸に溜まった熱い息を吐き出す。その間にも岳里はおれから目を逸らすことなく、じっといつもの色である焦げ茶と、本来の色である金で揺らめく瞳で見つめてきた。
 目を合わせながら、また手が下半身に伸びる。おれのものを手に取られ軽く上下に扱われ、息を吐いた。

「も、や……」

 二度目の射精の時はあっさりさせてもらえたけれど、最初の時に根元を押さえられ、散々我慢させられていた。もう身体は疲れて重く、頭もどこか霞みがかってぼうっとする。それなのにこれ以上何かされたら本当に意識を飛ばしそうで、怖かった。
 ベッドに預けていた背を僅かに浮かせ、おれのものに触れる岳里の首に腕を絡める。ぐいっと自分の方へ引き寄せ、抱きつきながら、未だ荒い息のまま口を開く。
 伸びた岳里の髪が、鼻先をくすぐった。

「岳里」

 ただ名を呼んだだけ、それだけだ。けれど岳里は息を飲む。

「がくり、がくり……っ」

 おれにもよくわからない。どうしたいのか、どうして岳里の名ばかり呼んでしまうのか。でも開いた口は同じ名ばかり形作って、それ以外を言葉にしようとしない。
 喉の奥から、声以外のものがこみ上げる。それさえも何かわからないけれど、息が詰まって、しがみつく腕に力がこもる。
 ぎゅっと、さらに岳里を引き寄せたその時だ。
 力づくでぴったりとくっつけていた上半身を剥がされ、僅かに岳里との間に隙間を作らされると目が合う。
 金色にぎらつく瞳でおれを捕えると、そのまま顔を寄せ、むさぼるように唇を合わせてきた。

「む、ん――」

 こじ開けられた口内に押し入る舌先を拒む理由なんてなく、荒々しく重ねられた唇を喘ぐように受け入れる。色々なものを纏い濡れる指先が躊躇いもなく首裏に手を回して頭を押さえ、さらに奥へ奥へと深い交わりを求めてくる。
 拙いながらも懸命に応えるも、それはおれが予想したよりも長く続き、しつこいとさえ思えるほどのものに息が続かなくなる。どうにか鼻で呼吸をするも絡む岳里の舌がそれを阻み、激しく高鳴る自分の心臓まで邪魔をしてきてうまくできない。
 酸素が足りなくなって苦しくなり、岳里の背中を叩いて訴える。いつもならせめて少しは息つく暇をくれるというのに、今日はすぐに開放してはもらえなかった。
 引きはがそうにもおれの力じゃ岳里に敵うわけがなく。ようやく離してもらえたのは、意識が吹き飛ぶ寸前だった。

「はぁっ、はっ」

 痺れる唇は開いたまま荒い息を繰り返す。酸素が足りない頭は何も考えられなくて、霞みがかったように朦朧とした。
 視界から消えた姿を探す余裕もなくとにかく息を整えようとしていると、すぐにまた岳里は顔を映した。重い頭を僅かに動かして目を向ければ、下されていた片足を持ち上げられ、ただでさえ岳里一人を挟んでいた足をさらに開かせられる。
 ぴとりと、下半身に何かが宛がわれる感覚に無意識に身体がかたくなった。

「あ……」

 思わず漏れた言葉に、無意識のうちに視線を下げれば、いつの間にか岳里が前をくつろげていた。そこから取り出された岳里の、猛ったものの先端が押し付けられている。
 おれの前では決して見せることのなかったそれを晒されては、飛ばしかけていた意識はいやでも戻ってきた。
 初めて見る岳里自身のものは、やはりその身体に見合った立派なもので。覚悟していたとはいえ、その大きさに思わず息を飲む。
 それははっきりおれに欲情していて、苦しげなほど張り詰めていて。どれほど、岳里がおれの準備が整うのを待ってくれていたのかが伝わってきた。どうしておれ相手にそれだけ膨らませられるのかはわからないとしても、同じ男として、これまでの状況をよく岳里は暴走しないで耐えてきたもんだと。そう改めていつも隠されていたものにまみえ、思う。
 好きな子が全裸で横たわっていて、挙句触れるだけ触れて。でも挿れないで我慢するなんて、きっとおれだったらできなかった。岳里の忍耐力には、本当に舌を巻いてしまう。
 でもそんな岳里の我慢も、今夜でようやく終わりだ。

「いいか」

 相変わらずの、短い一言。雰囲気も何もない、今がどういう状況かさえ知らないと言ったような、いつもの岳里の声。
 声だけ聞けばこんな時でも冷静でいられるのか、なんて思っただろうけれど。でもおれと目を合わせた金色は確かに激情を秘めていて。いつもと同じ、とは思わせてはくれない。
 決して逃がさないと、もう待てないと訴えるその目を見つめながら、おれは息を震わす。

「ま、待って」

 この状況に置いても制止を願う言葉に、岳里は口を僅かに歪ませた。声には出ないけれど、何故、とでも言いたげな不服そうな視線を向けてくる。
 けれどおれはそんな岳里から顔を逸らし、腕に目を向けた。そこに手をかけ、指先に触れる布の感触を確かめる。

「岳里は、脱がないのか?」

 全裸にされ、着ていたものはすべてベッドの下でぐしゃぐしゃに放られているおれに対し、岳里はしっかりと着込んだままだ。ただ前をくつろげ自身のものを取り出したくらいで、極端に肌の露出が少ない。
 それはこれまで穴を慣らされていた時もそうで、岳里は一度として服を脱いだことはなかった。今まではそれを気にする余裕すら与えてもらえなかったからよかったけれど、今のこの場面でさえおれだけ裸だというのは恥ずかしい。
 そう思って、おまえも脱いだらどうだ、という意味を裏に込めて伝えてみたわけだけれど。

「脱ぐ間も惜しい。もっとおまえの身体に触れたい。堪能したい」

 そう、あっさり返されてしまった。
 思わず口を噤んだおれに、そんなことはどうでもいいと言わんばかりに首筋に吸い付きながら、岳里はささやく。

「もういいか」
「――ん。……その、優しく、してくれよ?」
「わかっている」

 ようやく表情を崩した岳里は小さく笑いながらも、おれの足を持ち上げた。膝裏を押されると腰が浮き上がり、その隙間に折りたたんだ枕が差し込まれる。
 体勢が整うと、一度は離れた岳里のものが再び下に押し付けられた。
 未知の領域に踏み出す前におれは尻込み、息を飲み。思わず掴んだままの岳里の腕を握る力を強めてしまう。それを感じた岳里は、縮こまりつつあるおれに静かな声を降らした。

「力め、その方が受け入れやすいはずだ」
「りき、めって……」

 その言葉に思わず不安げに顔を曇らすと、岳里はすぐにおれの心配を見抜いたようだ。

「除玉を取りこんでいるんだろう。なら出てくるものはない、気にするな」

 出てしまったところでおれは気にしないが、とぼそりと続けられた台詞に言葉を失っているうちに、それまで制止していたそこがほんの少し、押し進められた。

「あっ」

 それまで集中しきれなかったものが一気に下へまとまり、咄嗟に声が漏れる。岳里なりに、声を出さずにもう待てない、と伝えてきたんだろう。
 力を抜け、っていう注文よりは幾分かやりやすいと思う。けれど緊張感は変わるわけもなくて、でももう待ったはなしだ。
 おれの身体を挟んで突かれた岳里の片腕に縋るように自分の腕を絡め直し、顔をそこへ寄せる。
 まだ何もされていないのに身の内から緊張に震え、息を荒くさせるおれに、岳里は一度鼻先に口づけを落とす。そして顔を離し、ゆっくりと腰を押し進めた。

「っ、う」

 指とは比べものにならない質量に息が詰まった。痛くないように、と散々岳里に慣らされたそこは多少の痛みで済んだものの、やっぱり違和感は残るし、強い圧迫感に呼吸が乱される。
 岳里のものを受け入れるそこが熱くて苦しくて、正直辛い。けれど言われた通りに腹に力を入れ、ゆっくりと進んでくるそれが少しでも入りやすいようにとおれも努める。

「――ふっ、ぅ」
「息を、しろ」

 苦しげな声に、強く瞑っていた目を薄らと開ければ、視線の先には眉に皺を寄せる岳里がいた。
 窮屈なそこは、岳里にとって居心地はあまりよくないはずだ。痛みを覚えさせるほどに締め付けている自覚はあるけれど、でも自分の意思じゃどうしようもできない。呼吸さえままならず、まともに息が吸えない。それでもそろそろと言われた通りに空気を吸い込んでは吐いて、浅く弱々しいものを繰り返す。
 内に徐々に迫る衝動に無意識に逃げようとするおれの身体を抑え付け、肉壁ごと一緒に奥へ押しながら、少しずつ、確かに岳里はおれの中に埋まっていく。押し広げられる淵の感覚を堪えきれず、掴んだ岳里の腕に爪を立てないよう気をつけながらも相当の力を指先に込めてしまった。けれどそれを受け入れる、とでも言うように、岳里はおれの名前を呼ぶ。
 おれも絶え絶えの息で岳里を何度も呼んだ。岳里のものだけじゃなく、色々なものがおれの中を押し上げる。
 胸が震え、喉が締まり。たくさんの、たくさんの岳里への想いがこみ上げた。それは目尻から形となって溢れる。一度こぼれてしまえば次から次に、涙は筋を作りながら垂れていく。
 やがて動きを止めた岳里が、おれの瞼に唇を落とした。目尻の涙を舌先で拭われ、薄らと目を開けると汗を滲ませる岳里の顔が映る。

「入った」

 それだけを告げると、岳里の腕を掴んでいない、ひたすらにシーツを握っていた方の手を取られる。そのままおれの手を下半身の方へ向けると、繋がった部分へと導かれる。指先で触れたそこは、根本までしっかりと岳里を受け入れていた。
 確かに深くまで繋がっていることを確認してから、おれは下に向けていた顔を前へと戻し、岳里と目を合わせる。お互い汗を掻いていて、それなのにぴったりくっついていて。
 いつの間にか、どちらからともなく口元を綻ばせていた。

「本当に、入ったな」
「ああ、よく頑張ったな」

 岳里は汗に張り付いたおれの前髪を掻き分けながら、甘やかすように触れるだけのキスをする。

「ん」

 すぐに離れて目を合わし、もう一度。角度を変え、何度も繰り返す。いつの間にか舌が侵入したころ、そろりと岳里の腰が動いた。

「は、んっ……」

 岳里に吐き出す息を飲みこまれながら、奥まで入りこんだものがゆっくり引かれていく感覚に耐える。背筋がぞくりと震え、また身体の内で燃え上がった熱に翻弄され始めた。
 退いては、また進み。何度かそうして動いて、岳里はおれの身体に馴染むのを辛抱強く待つ。その甲斐あってか、おれ自身でもわかるように、少しずつ、岳里のものを受け入れて力の入り加減が変わっていくのがわかった。

「が、くりっ」

 ゆるゆるとした下半身の動きに、繰り返される口づけに。どうにかその合間に岳里を呼べば、ようやくどちらも動きが止まる。

「痛いか」
「ちが、くて」

 そうじゃない。そうじゃなくて。
 開きかけた口を一旦閉ざして、岳里の視線から逃げるように俯く。顔を見ないまま小さな声で、精一杯の思いを伝える。

「もう、大丈夫だから。岳里の好きに動いて、いいから」

 その言葉でもう、すべてを察してくれ。
 そんな自分勝手な思いを抱きながら、未だ掴んでいた岳里の腕から手を離す。そのまま指先を伸ばし、岳里の首に巻きつけ両腕で抱きついた。

「我慢、すんな」

 今まで散々、我慢させてきただろう。仕方ないことだったとはいえ、初めからおれは岳里に無防備に接してきた。岳里ほどのやつであればおれのこといつでも強引に押し倒すこともできたろうし、何も今日まで堪える必要もなかったはずだ。それこそ、宝種を身体の中に入れたあの日に、してもよかったんだ。別にしちゃいけないっていうことはないはずだから。
 少しぐらい強引に押されれば、きっとおれは流されていただろう。それにあの日は最後もう何が何だかわからなくなっていたし、その時の雰囲気に飲まれて迫られていたとして頷いていたと思う。それでも、岳里はそういう手段を選ばなかった。自分の状態よりもおれを優先して、甘やかしてくれて。
 申し訳ないと、そう思う。でもその反面、正直嬉しくもあった。それほどまでに大切にしてもらえることが、想ってもらえていることが。
 そんな岳里だから。岳里ならいい。おれの全部をあげても、預けても。どんなにされたって。

「おまえなら、いい」

 言い終えるとほぼ同時に、無理矢理岳里の身体から引きはがされた。後ろに退かれる勢いそのままにベッドへ押し付けられ、驚いて目を見開いたおれの視界には岳里だけが映る。
 金色に光るその瞳は、これまで抑え付けていたものが晒されぎらつき、垂れる紺の髪が微かに揺れていて。
 きゅっと結ばれていた口元が解かれると、岳里は目を閉じ深い息をつく。おれを見つめながら薄らと開いた口を動かした。

「煽ったのはおまえだからな」
「え……あっ、ひ!?」

 ぼそりと零された言葉が聞き取れず、思わず聞き返そうとおれも口を開こうとした瞬間。腰を掴まれたと思ったら、抜けかけていた岳里のものを一気に突きつけられた。
 唐突のことに思わず声を上げるが、岳里は気にする様子はなくそれまでゆっくりとしていた動きを一変させ、激しい律動を開始する。

「あ、あっ、あっ」

 口を塞ぐ余裕もなく身体を揺さぶられ、短い悲鳴を上げながら手元にあったシーツを握った。それでも衝撃は逃げるわけもなく、容赦ない岳里の動きを精一杯受け入れる。
 奥へいってはすべてが抜けない程度に引かれ、また深くへと突かれ。それだけでも岳里によって色々と覚え込まされたそこは快感を拾いおれの頭を朦朧とさせるが、ある一点を突かれた時にすべてが真っ白に染まる。

「んあ、あっ」

 明らかにおれの声音も変わり、全身が、芯から震えあがる。中にいる岳里のものをぎゅうぎゅうに締め付けてしまった。ままならない息をどうにか吐きだしそれを受け流そうとするも、それを岳里が許さなかった。
 今度は深くまで潜るのをやめ、そこをしつこく穿つ。一度はとまったはずの涙がまた溢れてもその動きは止まらない。

「や、岳里っ、待って……! あ、ふっ、んっ」
「もう十分、待ったっ」

 おれほどではないにしろ、岳里も僅かに息を弾ませていた。
 涙でぼやける視界でどうにか岳里を捕えれば、その顔もおれを見ていて。目が合うと顔を寄せて、口を合わせる。
 ただでさえ呼吸ができず酸欠状態のおれをもっと追い詰めながらも舌を絡まされ、けれど腰の動きはとめてはくれなくて。必死に酸素を求めれば、緩んだ口元からおれのものだか岳里のものだかわからない涎が伝った。

「はっ……真司っ」

 岳里はおれの名ばかりを呼ぶ。その表情を滅多に変えない岳里が顔を歪まし、声を息を荒げて。
 それだけのことなのに、ぎゅうっと胸の奥が締め付けられる。涙がさらに溢れる。
 涙に汗に、さらには鼻水に涎に。きっと汚い顔をしているはずなのに、それなのに岳里はおれから目を逸らそうとはしない。汗を滲まし、鼻先から一滴それをおれの身体に垂らしながら、金色の瞳を薄暗い中に光らせる。
 それを見つめながら、おれは握っていたシーツを手放し、岳里の背に縋るように腕を回した。けれどその間にも身体に響く痺れるほどの快楽に、耐え切れず精を吐きだす。

「っあ、あ――――!」

 背がしなり、指先すべてが丸まる。思わず岳里の背中に爪を立ててしまいながら身体を震わすけれど、波が引く間さえ待たせてはくれなかった。
 出したばかりでさらに敏感になった身体を止まらずつかれてしまい、おれのものは内壁を抉られる度にどろどろとした先走りのようなものをさきっぽからを垂らした。

「とま、な、ひっ」

 そのことに気づいて岳里に訴えようとするも、言葉にならず。
 連日のように岳里の手に絞り出されたはずのそこは、今日でもう三度出したのにまた起き上がり始めて、泣いているのに、泣きたい気持ちになる。本当に息苦しくて、何も考えられないままただ必死に酸素を求めた。
 岳里のものは未だかたいまま、おれの身体を押し上げる。その間にもおれは四度目の欲を放つ寸前まで追いやられ、自分の喘ぎに阻まれながらも涙声ながらに訴える。

「ま、だっ、かよっ! も、やすま、せっ」

 ここまでくるのに待たせてしまって申し訳ないと思うし、実際こうして繋がれて、言葉に表しがたい感情がある。でもいつまでも岳里の体力におれが付き合ってられるわけがない。
 懇願に近いおれの言葉に、けれど岳里はとまらない。それもそうだろう、おれだって同じ立場なら止まってなんてやれない。けれど、もう本当にまずい。強すぎる快感にままならない呼吸に、どんどん意識が遠のいていく。
それなのに止まらない岳里に抗議の意味も込めて、また背中に爪を立ててやる。とはいっても服を着こむ岳里には大した痛みにはならないんだろう、とぼうっと考えたその時だ。
 前立腺を容赦なくえぐられ、おれは息をつめながらまた堪えていたものを吐きだしてしまった。声にもならない悲鳴をあげながら、目も眩むほどの衝撃に無意識に下半身に力がこもり、岳里のものをしめつける。

「っ、は――」

 出した余韻に身を震わせていると、耳元に来ていた岳里の口から僅かに息が漏れる。その後に奥に岳里の精が吐きだされる感じがして、おれは熱い息を漏らす。

「ん、は……ぅ、あ」

 あれほど激しかった動きが緩やかにとまり、岳里は中に出しきると目を細め、おれの上にのしかかってきた。といっても加減されているから、身動きがとれなくなるぐらいだ。
 岳里の下、なかなか収まらない呼吸を懸命に整えようとしていると、少しだけ身体を起こした岳里がおれの前髪を掻き上げた。汗で張り付いていたそれが剥がれると、少しだけ額が涼しくなる。
 そのころになればようやく少しはおれも落ち着き、岳里と目を合わすことができた。相変わらず金色のままの目はおれを見つめている。岳里も汗を掻いていたから、同じように額に張り付いた髪を払ってやった。
 おれの手が退けば、岳里の顔が降りてくる。軽い、触れるだけのキスをして、すぐに離れていった。
 目尻に親指が向けられ、涙の痕を拭い取りながら薄く口が開かれる。

「大丈夫か」
「なん、とか。……まさかおまえ、下半身まで忍耐強いとは思わなかった」

 雰囲気も何もない台詞を吐けば、岳里は小さく笑う。

「許せ。――痛みはなかったか」
「なかった、とは言い切れないけど、岳里のおかげで大分ましだったと思う」

 そう答えれば、安堵したのか僅かに表情を緩めた。笑うとは違うその顔をじっと見つめながら、岳里の腕に手をかけた。
 服を着込んだままだった岳里の纏った服は、汗を吸い少し湿っている。

「もう、脱いでもいいんじゃないか」

 せめて上だけでも、と言ったおれの言葉に頷いた岳里は、上半身を起こした。その時まだ中に入ったままのものまで動き、おれは思わず声を出してしまいそうになる。
 そんなおれを横目で見ながら、岳里は上に着ていたものだけを脱ぎ捨てまたおれに覆いかぶさった。
 髪を梳いてくる手に、困惑しながらも声をかける。

「あ、の……そろそろ抜いて、くれないか? 中のものも掻きださないと」

 中出しされた後は必ず掻きだすように、でないと腹を下すと、アロゥさんから注意を受けていたこともあり、おれはそろりと岳里を窺う。
 けれど岳里はおれの口の端から垂れたままになっていた唾液を舐めとりながら、こともなし気に結論を告げた。

「しばらくこのままだ」
「は……え?」
「宝種におれの精液を吸収させる必要がある。蓋代わりと思えばいい。腹を下すこともないから心配するな」

 そう続けた岳里は、それと、とさらに口を開く。

「これから宝種を体外に出すまで、排泄もなくなる。すべて宝種が世話をしてくれるから、除玉は使わなくてもいい」

 何も言えないでいるおれの顔をさりげなく綺麗にし終えた岳里は、離れていく前に鼻先にキスしてから身体を起こした。そして、おれの太ももを持ち上げる。
 そこでようやく、中に納まったままの岳里が確実に再びかたく張りつめだしたことに気がついた。

「な、なんででかくしてるんだよ!?」
「決まっているだろう。一度だけで足りるか」

 慌てて離れようとするおれの肩を片手で押さえつけ、余裕を見せつける岳里を恐々見上げる。

「で、でも明日も、明後日も――ん、ふっ」

 言いかけた言葉ごと落ちてきた唇に飲み込まれながら、岳里はゆっくりと腰を動かした。

 

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