あまえたい


友人にイラストを描いてもらったお礼に書いた小話です。


 

 袖を引かれ、デクは振り返る。
 先程足音を聞いていたので気がついていたが、やはりそこにはユールがいた。

「どうした」

 夕食を済ませ、皿を洗っていたところだった手を止めて、肌についた水滴を払いながら身体ごと振り返る。
 ユールから返事はなく、やや俯きがちな姿に内心で首を傾げた。
 もう一度声をかけようとしたとき、ぽんと胸にユールの頭が寄りかかる。

「……どうした?」

 同じ言葉を繰り返したデクに、ユールは胸に頬を押しつけたままぐりんと顔を向ける。
 ぶすっとした表情、けれどもその手は、デクのみぞおちあたりに手をかけ握り締める。
 デクはようやく言葉のない静かな行為から、察する。けれども戸惑い、迷いながらユールに手を伸ばした。
 そろりと腰に回した手が、払われないことで確信を抱く。
 そっと抱き寄せ、自分からも頬をすりつけた。

 おしまい