寂しがり

  今日は朝から散々だった。 連日仕事が立て込んでいる疲れからか、起きた時からすでに頭が痛くて苛々していた。 重たい身体を引きずり倉庫に行けば、倉庫番に依頼していたはずの素材は数が足りないどころか備蓄が空だと言われて集め…

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使い魔は自慢したい!

※番外編『愛の証はいくつでも』の内容とリンクしている部分がありますが、未読でもお読みいただけます。 塔の片隅でひっそり行われる使い魔定例会議。 そこでは様々な種の動物たちが顔を揃えて、魔術師団長の第一の使い魔である黒犬を…

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愛の証はいくつでも

  仲間の鍛練に付き合い汗を掻いたヨルドが上を脱いで裸体を晒すと、タオルを持ってきた部下がその背中を見てぎょっと声を上げた。「うわ、ちょ……背中すごいことになってますよ!」「ん? ああ、まあね」「まあねって……恋人がいな…

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使い魔は気配り上手

  日が暮れようという頃、荷物を片付け始めたノアに、それまで身体を丸くして眠っていたチィが頭を起こした。「うにゃ。今日もヨルドさまのところにお泊りですか?」「……まあ、そうだな」 ただ答えるだけなのに手元を睨むよう眼差し…

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35

  ふと目を開けると、目の前にヨルドの顔があって驚いた。 動揺のわりには声も上げずに微動だにしなかったが、以前にノアの瞬きですら起きていたという男はゆっくりと瞼を持ち上げる。「――まだ起きるには早いね。もうちょっと寝てい…

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34

  口づけを深めていくうちにいつの間にか裸に剥かれて、全身を撫でるくすぐったい愛撫にノアは身を震わせた。 日々鍛錬を重ねるヨルドのような肉体美はないし、それどころか引き籠っているので平均にも劣る貧相な身体を見せるのはさす…

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33

 「ノア。おれはきみが好きだよ。でも答えはすぐに出さなくていい。嫌いと思われていないならそれでいいんだ。これからゆっくり口説いていくから、覚悟してね」 するりと髪を手に取ったヨルドは、口元に寄せた灰色の流れに口付ける。 …

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32

 「――おまえこそ。どうしてそれを着つけているんだ」「もう、ノアは着けていないって思っていたし、なんの拘束力もないってわかっていた。けど、これがノアとおれを繋げてくれていたと思うと、どうしても外す気になんてなれなくて」 …

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31

  モロフに向かっているとされていたヨルドたちだったが、実は秘密裡にゾアルとラルティアナの国境付近に足を運んでいた。モロフに行くことは本当だったが、その前にゾアルの動向を辺境を警備する部隊に直接相談して、それをもとにモロ…

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30

  ヨルドはチィが暴れ回った場面を目撃しているうちの一人で、黒豹の騎士の正体は承知している。噂を否定つつも声を大にしなかったのはノアたちのためだ。騎士団副長の謙遜か、それとも本当に別に副長よりもさらに強い騎士がいるという…

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