ぐっすりすやすや

  いつものように泊まり来ていたノアは、ヨルドとともに寝支度を整える。 普段は恋人同士の二人を気遣い誰かのところに泊まりに行くチィが、珍しくノアに付いてきた。先日、「さすがに他に迷惑をかけすぎだ。おまえが出て行く必要はな…

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終章

  ばたばたと足音を鳴らして、数人の生徒が誠士郎の隣を駆け抜けた。「先生さよーならー」「おー、気ぃつけて帰れ。あと廊下走んな!」「はあい」 返事だけは立派に返しつつ、大笑いをして廊下の角に消えていった。 親しく…

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16

  火渡鳥の尾羽をひとつ。世界を見渡せるとされる空突山の頂上の土を一握り。土狼の鼻水少々と、月美花の葉から落ちた朝露。それに塩をひとつまみ。さらに竜の爪垢と海底火藻を、虹光雲の雫に、その他もろもろ。 必要なもの…

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15

 突然の浮遊感は一瞬で終わり、気づいたときには地面に足が着いていた。 辺りを見渡せば、先程の場所ではなく、土壁をくりぬいたような然程広くはない洞窟の中にいた。 頬のナイフが離れた瞬間、誠士郎は翻って相手と距離を取るため後…

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14

  ルフィシアンとの会話が増えたおかげか、どうしても壊すことのできなかった最後の壁がなくなったように思える。 物理的な距離が近くなったわけではない。予期せず身体を重ねてしまった気まずさは最初こそ残っていたが、お…

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13

  なぜ誠士郎がこの世界に来なければならなかったか。なぜルフィシアンの家だったのか。なぜ彼はこんなにも親身になってくれていたのか。そのすべてが完全に繋がった瞬間だった。 これまで、もしかしたらルフィシアンが誠士…

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12

  ルフィシアンは話を中断し、扉を開けに立つ。「ああ、ファルドラ。ちょうどいいときに来てくれた。今きみのことを話そうとしていたんだ」 部屋を訪れたのはファルドラだった。口に籠を咥えていて、中にはたくさんの果物が…

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11

  ふと目覚めた誠士郎は、ゆっくりと目を開けた。それに気がついたルフィシアンが顔を覗き込む。「ああ、セイ。起きたんだね」 安堵したように息をつくルフィシアンを、まだ意識のはっきりしていない誠士郎はぼうっと見つめ…

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10

 ルフィシアンは壊れ物を扱うようにそっと誠士郎を寝台の上に置いた。 丁寧に扱われることなどこれまでなかったし、はじめての状況でもあるため、どう振る舞うのが正しいかわからない。 これからどうされるのか。ルフィシアンを許した…

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  ルフィシアンたちに持っていく果実の皮剥きが終わった頃に、突然身体の奥底から熱が這いあがった。 初めは背筋がぞくりとしただけだ。次第に肌がざわつき、熱が全身に広まっていく。 ただ立っているだけなのに身体が重た…

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