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  リアリムの所在が判明したのは、彼が行方をくらませてから三日後のこと。 町長の使いが勇者に助けを求めてやってきて、町はずれの小屋に魔獣が集まりだしているという情報を得たのが始まりだった。 魔獣というのは人を襲…

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  旅の途中、幾度も困難は立ちはだかった。 勇者たちが向かったほうとは逆に位置する町村が襲われ、間に合わなかったこともあったし、依頼を受けて凶悪な魔獣の討伐に出向いたこともある。 あるときには突如として現れた魔…

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  翌日、昼を少し過ぎた頃に神殿から戻ってきたリューデルトは、ラディアから魔獣に襲われたことを聞き、リアリムをひどく心配してくれた。 リューデルト自身も魔獣の出現は結界の効果が薄まってしまったからだと判断し、術…

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 勇者とリューデルトは、予定通り一度、リアリムたちのもとに戻ってきた。 リアリム自身のものと、周囲に張るふたつの結界を施し直して、まだ読み終えていない資料があるからと休息もそこそこに神殿に向かう。 それからさらに一晩過ご…

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 勇者が最後の目的とする魔王が座する魔王城。それの場所を誰も知られていないのには厄介な事情があった。 城ともなればそれなりの規模がある。ましてや魔族の王がいるともなれば人々の注目は集まることだろう。だからこそ魔王は、自ら…

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  日中で、なおかつ人通りの多い通路に面していることもあり、道行く人々の話声が二階の部屋にまで届くのだ。窓から差し込む光の十分で、部屋全体が温まっている。直接日差しを浴びることのない位置にいるリアリムも、毛布を…

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  ぴりっと肌に走った痛みに、今度こそ抵抗を止める。「そう、大人しくしていろよ」 低くざらついた、けれども粘つくようないやらしさが耳を撫でるような声だった。 肌から離れた抜き身の短剣は、すうっと細い一線の赤に濡…

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  勇者として名乗り出て、町の混乱とスーリからの難民たちを落ち着けることができたリアリムたちは、その後三日ほどツェルの町に滞在し、人々の心に寄り添うことにした。 他にも魔族襲来を警戒していたが、闇の眷属らが現れ…

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  魔人襲来を察知したリアリムたちは、村に留まることはせず、夜道を魔術の光で照らしながら馬を駆けさせた。 夜は、闇のとき。闇に属する魔族たちがより活発になる時間帯だ。そんなところへ身を晒せば途端に襲われてしまう…

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  皆が頭を下げるなか、村の代表として村長が小袋をリューデルトに手渡した。 それを受け取り、魔術師は中身を確認することなく懐にしまう。 彼らには自分たちの素性を明かしているし、まさか恩人である勇者を騙すことなど…

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