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  宿屋の脇に併設された食堂に、勇者とリアリム、リューデルトは朝食をとりにきていた。 用意された料理が机に出揃った頃に、リューデルトは正面にリアリムと並んで座る勇者に苦笑する。「いい加減、許していただけませんか…

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  突然頬に衝撃が走り、リアリムははっと目を開けた。びくりと身体が震えたものだから、驚いたヴェルが、眠っていたらしい耳元から寝台の下に逃げていく。 耳障りな音がすると思ったら、それは荒くなった自分の呼吸と、早鐘…

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 「ねえ、おにいちゃん。わたしも町につれてってよ」 森に入る準備を整えているリアリムの背に、少女の声がかけられる。振り返れば大きな瞳を輝かしたリアーナがいた。 恐らく、父あたりが口を滑らせでもしたのだろう。明後…

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  困らせるようなことを言ってすまない、と伝えようと口を開きかけたところで、リアリムはでも、と続ける。「でも、おれは今、勇者さまをもっと知りたいと思った。不幸な話を聞いて、だから同情して……なのかもしれない。で…

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 「勇者とて人間、そして男です。けれども魔力を狂わせる力のせいで触れられる相手は限られています。つまり、一般人の女性とは性欲を発散させることができないのです。そこでわたしです」 魔術師であるリューデルトであれば…

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   身体を横にしてもなかなか眠気はやってこず、気がつけば朝日が顔を出し始めていた。そうなればいつまでも冴える目に苛立っているわけにもいかず、リアリムはリューデルトを手伝い朝餉の準備をする。 朝の鍛錬…

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  「……感じられませんでした」「感じられない? そんだけでかいってことか?」「いいえ、そうではありません。それでしたら途方もない大きな力を漠然とでも感じ取ったはずです。けれどもそれもない」 人間には…

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  咄嗟に傍らに転がっているリューデルトに目をやったが、彼はまるで人形のように大人しく静かな寝息を立て眠っている。身じろぎするどころか唇が動いている様子もない。 また声がする。もしやと思い勇者の方を見てみると、…

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  どうにか危うい騎乗姿がリューデルトに認められるようになった頃、ようやく四人はワンナの町を旅立った。 予定通り勇者がシュナンカの手綱を握り、リアリムが彼女の上に跨る。短期間で詰め込まれたとはいえ、駈歩(かけあ…

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  リアリムの旅の準備を整えるため、勇者一行は騒動があったその日も町に留まった。同じ宿を町長の権限でとってもらい、今回は一人一部屋で身を落ち着ける。 “魔を呼ぶ者”と判明したリアリムは話し合いを終えた直後、優秀…

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