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  夕方頃にようやくおれの身体に力が戻ってきて、その頃には岳里の瞳も焦げ茶のものになる。おれの力も自分の中から消えてしまったと、どこか残念そうにする岳里に笑いながら、頭から遥斗とヴィルのことが離れることはなかっ…

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  自分たちの部屋まで戻りようやく、捕まれていた腕は解放される。 確かに、していて楽しい話なんかじゃなかった。でも、どうしてろくに挨拶もさせてくれないままコガネのもとから去ったのか。 それを聞きたくて、前を向い…

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 岳里の首に巻いた両腕の片方を外して、手を伸ばして窓を軽く叩いた。なるべく小さく、けれどヴィルだけは聞こえるように。 確かに耳に届いているはずなのに、でもヴィルは窓に目すら向けようとはしない。「おかしいな……」 首を捻っ…

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  慌ただしい昼を過ごし、夕方は二人でのんびりして――そして、夜を迎えた。 光玉という産物があるこの世界だけれど、みんな眠るのは早い。日が落ちてしばらくしたらもう大半が寝静まっている頃だ。 とはいっても、街に出…

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  忙しく日々は過ぎ、あっという間に岳里が隊長に就任する日の前日になった。早朝から王さまから呼びだされ、おれはてっきり明日のことについて話すのかと思ったけど――どうやらそれよりも、もっと大切なことだったらしい。…

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  風呂から戻ってきた岳里の話を聞いたおれは、驚きに声をあげた。「えっ、じゃあ岳里の剣は傷を癒せるんだ?」「ああ。だからそのことを伝えにこれから王のもとへ行く」 代わりとなる別の、ものを斬れる剣が必要だ、と岳里…

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 「まさに神より授けられし武玉は個々が光る。岳里は、どんなものになるのだろうな」 小さく笑う王さまに、けれど岳里は相変わらず愛想笑いすらせず口を開いた。「だが、おれには魔力などない」「ああ、そうだった。まだ説明していなか…

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  しんと静まるこの場で、おれは落ち着かない心で、対峙する二人を見つめるしかできなかった。 ここは特別な時にしか解放されない競技場。とは言っても極めて小規模で、ただ戦う場所があるのと、あとは各部隊の隊長たち、王…

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  地面に大の字になりながら、ヴィルは唇を尖らせた。「おぬし、さすがにあれはずるいだろう。いつの間にあんなものを会得していたのだ。おぬしを指導していたはずのわしが知らんとはどういうことだ」「おまえがいない時少し…

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第7章

 ヴィルに禍の名――エイリアスの名を教えてもらってから、もう七日が経つ。一向に進展はなく、おれと岳里は、もうほとんど以前の生活に戻っていた。 岳里はヴィルから剣を学び、おれはライミィからこの世界を学ぶ。何かしたいとは思っ…

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