魔力は使っても寝たりして休めば消費された分が回復されるそうだ。もし有する魔力が尽きかけたら、本来魔術は使用できなくなるらしい。だけどたとえ魔力の底が見えはじめていても、強い魔術師の場合無理にでも魔術を使うこ…

続きを読む →

第2章

  おれが起きる度に、岳里はそこにいた。だからおれは、安心してまた眠る。それを何度か繰り返しているうちに、おれの熱は完全に下がった。 そのおかげか、胃袋まで元気になって今ではもう腹ペコだ。「あー、腹減ったぁ。岳…

続きを読む →

  おれは岳里に抱えられたまま、ついに部屋の前にまで来た。「ここは今空いてる三番隊隊長が使用する部屋なんだ。右隣の部屋はコガネとヤマト、その隣はおれだ。左の部屋にはアロゥとジィグンがいるし、何かあったら気兼ねな…

続きを読む →

 これからどうなるのか、どうすればいいのか。はっきり言って、自分のことだけどまったくわからない。これまでほんの少しの時間だったけど、この世界で見たもの、聞いたものは、この世界はおれたちの世界とは違うんだとただ教えるばかり…

続きを読む →

  ネルに案内されたのは、城の地下だった。階段を下り、そのまままっすぐに進んだ先。そこでようやく、ネルは頭の後ろで組んでいた腕を解き、足を止めた。 その目線の先には、いくつもの、俗にいう魔方陣ってものがたくさん…

続きを読む →

「じゅ、獣人って奥が深いんだな……」「まあな。でも召喚されたおれたち獣人は幸せなんだ。絶対的に相性がいい相手が主となり、力あるおれたちは守るべき主が生まれ、幸せに暮らせるのが大抵だからな」 幸せに暮らせる。それは確かにい…

続きを読む →

  そんな風には見えなかったけどなあ、なんて思いながら、おれは岳里の後ろでその様子を見守った。 ふたりが握り合ってた手を離して、今度はおれを対象としてジィグンは手を差し出す。おれも今度こそと手を出そうとしたけど…

続きを読む →

「さて。まず始めに、どっから説明するべきか……」 挨拶も終わり、早速レドさんはうーん、と眉間に皺を寄せ悩み出した。 そう言えばさっき岳里に、おれに説明するって言ってたな。それについてなんだろうか。「――おれが今から言うこ…

続きを読む →

  おれなんか、不安で不安で仕様がない。だって、ここがどこだかわかんないんだぞ? 携帯電話も繋がんないし、変なメールが来て壊れるし。それにおれと岳里の二人しかいない。 どこか遠くで、鳥の鳴き声が響き渡り、一斉に…

続きを読む →

第1章

  ――ここはどこだ? 何で、こんなとこで寝てんだ……? 見渡す限りの深い緑たちはただでさえ寝起きで働かない頭に追い討ちをかけ、何も思い浮かばせてくれない。正面の青空は憎たらしいほど雲ひとつない晴天で、どこまで…

続きを読む →